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2025.12.07

「憐れまれる方」  ルカの福音書 1章39節-56節   井上圭 伝道師

 

今日はアドヴェント二週目です。救い主を身ごもったマリアにフォーカスを当てましょう。マリアは、主の言葉は必ず実現すると信じて喜んだ幸いな人です。しかしその置かれた状況は喜べるものではありませんでした。
マリアはある日突然、御使いから「…あなたは身ごもって男の子を産みます。…聖霊があなたの上に臨み…生まれる子は神の子と呼ばれます。」(ルカ1:31‐35)と告げられます。マリアは結局「…どうぞ、あなたのおことばどおり、この身になりますように」(ルカ1:38)と答えますが動揺は隠せません。時を置かずマリアは立って、山地にあるユダの町に急いで行き、エリサベツを訪ねました。というのは、エリサベツも男の子を身ごもり、妊娠六か月であることを御使いから告げられたからです。(ルカ1:36)エリサベツは年を重ね出産できる年齢を過ぎていましたが、夫ザカリヤに御使いが現われて子どもが与えられることを告げ、神の恵みによってエリサベツは妊娠したのです。二人は、信じられないような体験で妊娠したので相談しやすかったでしょう。あるいは、不妊のエリサベツが妊娠したことを実際に目にすることで自分の妊娠について確証を得たかったからでしょうか。
マリアとエリサベツの会話は次のようです。「エリサベツがマリアのあいさつを聞いたとき、子が胎内で躍り、エリサベツは聖霊に満たされた。…あなたのあいさつの声が私の耳に入った、ちょうどそのとき、私の胎内で子どもが喜んで躍りました。」(ルカ1:41‐44) とマリアやエリサベツだけでなく胎内の子さえ喜び踊ったのです。この反応は、救い主が私たちのもとに来られたことを信じた者たちの姿そのもの、教会の姿そのものではないでしょうか。「喜んでいる者たちとともに喜び、泣いている者たちとともに泣きなさい。」(ローマ12:15)とありますが、悲しみを共有し合うだけではなく、喜びも共有し合える関係、それがクリスチャンであり教会です。また、「あなたがたはイエス・キリストを見たことはないけれども愛しており、今見てはいないけれども信じており、ことばに尽くせない、栄えに満ちた喜びに躍っています。」(Ⅰペテロ1:8)という聖句もありますが、イエスを信じている者たちというのは、「ことばに尽くせない、栄えに満ちた喜びに踊って」いるような人々であり教会の仲間なのです。
マリアの悩みや恐れは結婚前の妊娠に対する不貞の噂、ヨセフから離縁されないかなどでした。それでもマリアは「主によって語られたことは必ず実現すると信じた人は、幸いです。』」(ルカ1:45) と主の約束の言葉を握りました。この世の価値観では、物質的、経済的な物差しや健康とか人間関係によるものですが、ここでマリアの言っている幸いな人とは、主の御言葉が必ず実現すると信じる信仰の人だと言っているのです。「さて、信仰は、望んでいることを保証し、目に見えないものを確信させるものです。」(ヘブル11:1)とありますが、まだ現実になっていないことでも、主の御言葉を信頼し、御言葉どおりになると信じて生きる人は幸いな人といえるのです。
続いてマリアは「私のたましいは主をあがめ、私の霊は私の救い主である神をたたえます。この卑しいはしために目を留めてくださったからです。(ルカ1:46‐48) と告白しています。ここで「卑しいはしため」とありますがこれは自己卑下しているのではなく、主の御前では自分は卑しいはしためのような存在だと言っているのです。確かに彼女はどこにでもいる貧しい家庭の娘でした。しかし神の選びはその人の人間の能力や境遇などでなく、理解を超えたところにあるのです。こんな私たちにも主は目を留めてくださいました。マリアは続けます。「力ある方が、私に大きなことをしてくださったからです。…主はその御腕で力強いわざを行い、心の思いの高ぶる者を追い散らされました。権力のある者を王位から引き降ろし、低い者を高く引き上げられました。…」(ルカ1:49‐55) これはマリアの賛歌とも言いますが、神の力、聖さそして憐れみについて彼女はほめたたえています。
主のあわれみが尽きないからだ。それが朝ごとに新しい。…(哀歌3:22,23)主の憐れみは尽きることなく朝ごとに新しくなり続けます。罪深い私たちにも神は目を留められ、大きなことをして下さると期待しましょう。

 

≪分かち合いのために≫

  1. マリアから何を教えられますか。彼女から実践したいと思う信仰の姿がありますか。
  2. 主の憐れみを感じる時はいつでしょうか。
    栄えに満ちた喜びをどのように体験することができるでしょうか。

 今日の暗唱聖句

 

「主のあわれみが尽きないからだ。それは朝ごとに新しい。『あなたの真実は偉大です。』」(哀歌 3章22b‐23節)

 

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