■黙想エッセイ
中世のスコラ哲学を代表するイタリアの神学者トマス・アクィナスは「一冊の本ばかり読む人に気をつけなさい」と警告したことがあります。偏った理念にとらわれてしまうと、真実が見えなくなるという意味です。これを「アンカリング効果」 または「錨を下ろす効果」 と言うそうです。これはプリンストン大学の心理学の教授であるダニエル・カーネマンなどによって提唱された概念で、錨を下ろした船が動きを制限されるように、 固定観念にとらわれた人は合理的思考ができないという現象を言います。思考の枠が固定されてしまうと、だれかが正しいことを語っても、耳に入りません。
本来の意味を歪曲して受け取り、自分と意見が違う人にすぐに敵意を向ける場合もあります。だからと言って、何でも多数の意見に従うことも、賢明な方法ではありません。集団の知識も正しくない結論を導き出すことがあります。ダニエル・カーネマンは「人間は機械ではないので、判断過程で、一時的な感情など、いくつかの状況の影響を受けて判断を下す」と言い、「群衆は思っているほど知恵深い集団ではない」という結論を出しました。
人間の制限された視角では真実を見据えることができません。ですから、聖書のことばに照らして神様の目で事柄を見つめなければなりません。そして、神様から与えられた真理のみことばを大胆に宣言しなければなりません。神様は、多数の偽物の勢力に屈しない勇気ある一人とともにおられます。