■黙想エッセイ
ベトナム戦争に参戦したアメリカ軍の兵士たちが、帰国後、戦争当時に経験した怒りや被害意識、羞恥心などの感情を否定的に表出し、深刻な社会問題をもたらしました。それにより、一つの診断名が生まれました。「心的外傷後ストレス障害(PTSD) です。しかし、なぜこのような現象が第二次世界大戦よりもベトナム戦争で多く現れたのでしょうか。
研究の結果、その違いは、本国召還に使われた交通手段にあることが分かりました。
第二次世界大戦当時は、アメリカ軍は船で移動し、ベトナム戦争では飛行機で移動しました。船で移動したアメリカ兵たちは、数ヶ月間、限られた空間で過ごさなければな
りませんでした。そして、戦場で経験した喪失感や痛み、苦しみ、良心の呵責による懺悔の思いなどを互いに打ち明け、ともに泣き、励まし合いながら過ごしました。しかし、飛行機で移動した兵士たちには、自分たちの苦痛を分かち合う機会がありませんでした。それだけでなく、本国に到着した時、第二次世界大戦に参戦した兵士たちは英雄として待遇されましたが、ベトナム戦争に参戦した兵士たちは、政治的にも社会的にも肯定的な評価を受けられませんでした。