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NO.650  2021.01.31

「時代の変化を見極める」

 

ヨハネが捕らえられた後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べ伝えて言われた。 「時が満ち、神の国が近づいた。悔い改めて福音を信じなさい。」(マルコ1:14-15)

 

二回目の緊急事態宣言が出されて、三週間が経過しようとしています。まだ、完全にその効果が出ているとはいえず、延長の可能性が大きい状況です。もし、緊急事態宣言が延長になった場合は、それに合わせて教会の礼拝もリモートの礼拝になっていくようになります。
今、新型コロナの世界的な感染拡大の中で、社会が大きく変化するただ中にあるということができます。コロナがその機会を作り出しているといえます。
かつて、14世紀には黒死病(ペスト)が、東アジアから西ヨーロッパにかけて瞬く間に拡大しました。
1349年には西ヨーロッパ全体にまで広がり、人口の三分の一が死亡したと言われます。特にイタリアのフィレンツェでは人口が半分にまで激減したのです。
しかし、ペストで壊滅的な打撃を受けたフィレンツェでは新しい文化が花開くようになったと言われいます。1436年には140年間かけて建てられ続けた大聖堂が完成し、イタリアル・ネッサンス前期のシンボルとなります。また、この間、ペスト以降の社会的大変動の中で、金融、商業の分野でのメディチ家の勢力が台頭し、ローマ教皇庁にまで大きな影響力を持つようになります。
16世紀初めにはローマのサンピエトロ寺院建設のための資金を貸し出し、それを免罪符の販売で回収するという、信仰をお金集めの手段にするような堕落を生み出し、それに反発した修道士ルターが1517年に宗教改革運動を始めます。
歴史的には、このような経緯のゆえに、「ペストは近代の陣痛」と呼ばれたりしています。カトリック教会の権威の喪失と新しい商業金融資本家の台頭、さらにはルネッサンス、そして宗教改革を生み出すという大きな潮流となっていくことになります。もちろん、ペストの大流行から宗教改革まで170年もの時間がかかっているのですから、そう簡単にすぐに事が起こるという話ではありません。しかし、大きな潮流の変化がこのペストを契機として起こったのです。

イエスが「時が満ち、神の国が近づいた。悔い改めて福音を信じなさい。」と宣教を開始されたときは、バプテスマのヨハネが捕らえられ、社会的、信仰的な暗雲が立ち込めているときでした。その時に、イエスは神の国の宣教を開始され、神の国の到来を告げ知らされたのです。そうして、ご自分の命を十字架に捧げることで、新しい時代の転換点となられたのです。以来、イエスを通して伝えられた福音は全世界に向けて伝えられていくことになるのでした。
私たちも、このコロナ禍を、単に運が悪いことになったとか、予想だにしなかった悲劇として受け止めるのではなく、何か神様のご計画が大きく動こうとしている。その感覚を養いたいと思います。まだ私たちには見えない、しかし動いている神様の御手がある。その大きな時代の変化の節目に私たちは立っていることを覚えたいと思います。その中で私たちが果たすべき役割があるのです。そのような視点から、時代の変化を見極めながら神様の時に応答していくものとさせていただきましょう。

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