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◆主と共に生きる◆信徒の証し

NO.264  2022.07.24

■黙想エッセイ

 

精神科医のポール・トゥルニエの著書 『人間の場所 (A Place For You)』 に「中間ゾーンの不安」という用語が出てきます。これは人々の心の中の戸惑いや不安のある部分を指します。ポール・トゥルニエは、サーカスの空中ブランコにたとえて、この中間ゾーンについて説明しています。
二人の人が両サイドから空中ブランコにぶら下がり、中央に向かってブランコを大きく揺らします。ある瞬間、一人がブランコから手を放して空中で宙返りをして、もう一人の手を掴みます。ここで自分のブランコから手を放して相手の手を掴むまで、何にも拠り頼む対象のない空中に浮いている間が、まさに中間ゾーンです。ところで、このとき、掴んでいたブランコから離れて飛ぶ人よりも、反対側から飛んで来る人の手を捕もうと待っている人のほうが緊張するそうです。彼がタイミングを正確に合わせてこそ、安全に曲芸を終えることができるからです。観客たちは、空中ブランコから飛んだ人に感嘆して拍手を送りますが、最も注目するべき対象は、反対側で手を掴む人なのです。
私たちも、いつも失敗に対する不安を抱えています。しかし、私たちはすでにブランコを掴んでいた手を離しました。私たちに残されていることは、反対側で私たちを安全に掴まえてくださる神様を信じることだけです。今、手に掴んでいるものがないからといって、不安になる必要はありません。私たちのタイミングよりも、神様のタイミングのほうが正確だからです。

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